新卒採用を成功するためには、綿密な計画と共にスケジュールに沿った遂行が求められます。広報開始時期や選考時期などは年度によって前後する場合もあり、日程の確認も行う必要があります。今回は、採用担当者が特に留意するべきスケジュール管理とフローについて注意ポイントを解説します。
新卒採用のスケジュールは、以前は日本経済団体連合会(以下:経団連)により決定されていました。しかし経団連は、2018年にこれを廃止すると発表。それ以降は、政府主導で新卒採用のスケジュール及びルールづくりが行われています。2025年度卒の学生を対象とする採用活動のスケジュールは、以下のとおりです。
広報活動開始日:卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
選考活動開始日:卒業・修了年度の6月1日以降
採用内定日:卒業・修了年度の10月1日以降
新卒採用のためにスケジュールを決める際、公開されたスケジュールをもとに、採用活動のスケジュールを決定します。
また、優秀で自社の適性に合った人材を獲得するためには、同業他社や大手企業の動向に沿った動きをすることも大切です。日程の決定のために注意しておきたい3つのポイントをご紹介します。
・学生の動きを把握する
・大手企業や同業他社のスケジュールを把握する
・採用活動のための予算や人員を確保する
毎年行われる就活スケジュールの流れに沿って、学生たちも活動を始めます。学生は就活サイトや就職情報サイトに掲載された情報、紹介されているイベントや会社説明会にも敏感です。また学校からの推奨もありOBやOGへの訪問を行い情報収集に努める学生も少なくありません。採用選考にあたる企業側はこのような学生の動きにも注目し、学生が参加しやすいイベントの時期や活動時期に合わせて広報を行うと、より効果的な結果を得ることができます。
大企業や有名企業の広報活動は時期や方法を含め非常に参考になります。他社の日程を参考にしつつ、あくまでも他社と時期が被らないように工夫することも、多くの学生を自社の広報活動に導く要因となります。
採用のための広報活動には経費がかかります。また効果的にイベントや説明会を開催するための担当者確保も大切なポイントです。広報活動の計画段階で、あらかじめ予算や人員確保について詳しく検討をする必要があります。学生が就活をする時期はある程度重なりますので、不備のない準備が採用成功へのカギと言えます。
就職活動のスケジュールや、インターンシップ制度の導入などは年度や政策によっても変化します。採用活動の時期は他社に遅れることなく、優秀な人材へアピールするためにスムーズに遂行したいものです。計画的に進めていくための採用活動に関する時期の特徴をまとめました。
毎年3月頃から本格的に始まる企業説明会などの広報活動に向けて、2月までの半年間ではインターンシップの実施を試みることができます。1月は基本的に大学の後期試験と重なるため、セミナーや説明会の開催には不向きと言えます。この時期は企業説明会に向けての下準備期間として、会場の確保や設営の準備、大学への挨拶回り、説明会の詳細打ち合わせなど細かい準備に当たる期間に適しています。
本格的に広報活動が解禁となる3月は、自社の会社説明会の開催などで慌ただしくなります。就職情報会社などを通してエントリーなども開始されますので、採用担当者は対応に追われるようになります。早期エントリー学生への入社案内や応募案内も迅速に行うことが求められる時期です。
セミナーや会社説明会を終えている企業は、この時点で選考試験の準備を進めていきます。早いところでは面接を実施するほか、エントリーシートや選考活動から合否を出し、早期内定者への通知を発送する企業もあります。
この時期は本格的な内定選考に入るため、社内会議や必要に応じて内定者を集めるなど企業によって独自の方法を採るところもあります。夏休みを迎える前に内定作業を終えてしまうので、選考活動のピークとなる時期と言えます。早期に内定を決定した学生へのフォロ―アップもこの時期に行うことで、内定辞退の防止に効果があります。
新卒採用を成功に導くためには学生に自社を宣伝することが重要です。新卒採用は「広報活動」によって広く自社をアピールしたうえで、内定を判断するための「選考活動」へとつながっていきます。新卒採用にあたりどのような手順で進めていくのかまずは「広報活動」の流れについてご紹介します。
広報活動としてまず「会社・企業説明会」があります。企業自らが企画開催するもので、社内の会議室や社外の貸会場など開催場所はさまざまです。自社サイトなどでは網羅しきれない社風や現役社員などからの生の声を届ける貴重な機会になります。入社決定のポイントや業務内容などに、OBやOGの体験を通して触れてもらうことでより具体的なビジョンを発信することができます。
広報活動の代表的なものに、就職情報関連の企業等が主催する「合同会社・企業説明会」も挙げられます。説明会は業種別、地域別あるいはターゲット別などさまざまに分類され開催時期にも幅があります。自社説明会への誘導や自社ブースでの直接アプローチなど採用側が人材獲得をするための有利な機会となります。合同でたくさんの企業が参加する説明会では自社のアピールにつながるよう事前の計画と工夫を凝らしたブース紹介になるよう努めることも重要です。
自社広報の一環としてインターンシップを導入することも効果があります。実際に実務体験やプロジェクト課題に参加することで、将来を具体的に想像しやすくなります。また仕事場の環境や社内の雰囲気を理解することは、入社後のミスマッチを回避し、より適切な人材確保に役立てることにつながります。
最近企業の採用に人材紹介やスカウトサービスを利用するところが増えています。これまでのように企業側へ学生が訪問するのを待つのではなく、適合する人材を企業からスカウトするという方法です。求職サイトや就職情報関連の媒体に登録している求職者の中から、企業がターゲットとする人材を検索、適合者へスカウトメールを送り、応募を誘導します。サイトが持つ多数のデータベースの中から検索によってターゲットを絞れるほか、条件設定も非常に簡単で、個別にコンサルティングを受けられる利点もあります。
企業の情報発信の後は選考作業です。応募してきた学生の中から自社の適性に合う人材を見極めて採用する必要があります。採用するための選考方法についても流れをご紹介します。
最初に行うのが書類選考です。書類に当たるのは履歴書、成績証明書、エントリーシートなどが挙げられます。履歴書や成績証明書は、人材の技能や能力に関する情報が記載されていますので、採用人材に適合するスキルを備えているかという選考の基準となります。エントリーシートでの回答内容からは、就職への意気込みや理解度などを図ることができるほか、人物像や適正、行動特性などを読み取り、適合する人材であるかを判断する材料として有効です。
筆記試験には一般常識、専門知識、適性試験、小論文・作文などがあり、一定の能力を判断する資料として有効です。一般常識は、学業をどの程度マスターしているかという教養の有無を判断する材料として役立ちます。職種別採用の場合は、専門知識がどの程度備わっているかも重要な判断基準です。適性試験では、求人ターゲットの人物像を見極めることができ、職業の適性を判断するための参考資料になります。小論文や作文は表現力、独創性、創造性などを評価するために行われ、芸術性やオリジナリティを求められる業種には欠かせない選考要素となるかもしれません。
面接試験は個人面接、グループ面接、グループディスカッション、ディベートなどの方法があります。一人ずつの個人面接は本音を引き出しやすく、性格や適性を判断しやすい特徴があります。グループ面接はある程度まとまった人数に対応でき効率は上がりますが、個人的な適性を掘り下げるのが困難になる場合もあります。
4人~7人のグループで議題を中心に話し合いがもたれるグループディスカッションは採用担当抜きで行われます。応募者の進行にゆだねられ、リーダーシップや協調性、コミュニケーション能力、積極性などを見極めるために有効です。ディベートはグループディスカッションとは異なり、最初に課題に対する回答を「YES」「NO」の2種類に分類します。自身の回答に対してどの程度正当性を立証し、道理を得ているかという論理的思考に長けている人材かという判断材料に最適な方法です。
新卒採用のための広報活動や準備は大変な業務です。採用に至るまでの一連の流れは、学生や他企業のスケジュールの傾向に沿った計画を立てていくことがポイントです。広報解禁や選考時期の規制がある以上、独自の動きでは世間の波に乗り遅れてしまいます。また、広報活動や採用人事担当に携わる社員も社内業務を抱えながらの活動になるかもしれませんので、採用時期は慎重な計画と遂行が求められます。採用担当者だけではなく、社内一体となったコミュニケーションの充実を計り、新卒採用を成功させましょう。