ダイレクトリクルーティングとは?新卒採用の新たな手法

ダイレクトリクルーティングとは、海外で10年ほど前から実施されており、近年日本でも注目されるようになった採用手法です。ダイレクトリクルーティングとは、どのような採用手法なのでしょうか?注目を集める採用手法を取り入れる際に、採用担当者が気を付けたい点と合わせてお伝えします。

ダイレクトリクルーティング

ソーシャルリクルーティングやダイレクトリクルーティングの出現

ダイレクトリクルーティングとは、従来の「新卒一括採用」に見られるような、求人広告や人材紹介(エージェント)といった『仲介役』をもたずに、直接採用候補者とやりとりする採用活動のことを指します。
2005年頃に「逆求人イベント」という、学生自身が企業へ自分をPRする対話式のイベントが出現し、2012年頃にはSNSの盛り上がりとともにソーシャルリクルーティングが出現しました。

ソーシャルリクルーティングとは、企業がSNSの公式アカウントを持ちながら情報発信を行い、ダイレクトに求職者とやり取りすることが可能なものです。
リクナビやマイナビなどの新卒メガサイトを経由しないと、企業と対話するチャンスさえなかった時代から、SNSを利用し、よりカジュアルな手法で企業の話を聞きに行ける時代へ、大きく変化を遂げてきました。

2014年頃になると、ソーシャルリクルーティングサービスと、中途市場で既出のスカウトサービスを掛け合わせた「スカウティングサービス」が出現します。これは学生たちのプロフィールや経歴を、WEBサービス上で確認し、企業から個々人へと直接スカウトを送るスタイルであり、今のダイレクトリクルーティングの土台となりました。

海外では、ダイレクトリクルーティング採用は10年以上の歴史があり、半数以上の企業が取り入れていると言われています。少子化により人材不足となった現代の日本では、企業よりも学生が有利な『売り手市場』となっているため、このダイレクトリクルーティングのような新たな採用手法が注目されるようになったのです。


参考~新卒採用は激化している

“学生の約半数は2社以上から内定をもらっている一方で、「採用が前年よりも大変になった」と回答する企業が増加している。「昨年よりも大手企業に合格して辞退するものが増えた」「プレエントリー数~応募者数~求める学生が集まらない」というものが見受けられる”(HR総研『2017年度新卒採用 選考解禁後の動向』調査結果【2】【3】より)

ダイレクトリクルーティング

企業への影響

昨今の新卒採用では、企業は3月の情報解禁よりも早い段階で、学生との接触を行うことに注力しています。インターンシップによる職業体験などを実施しながら、有能な人材に早く内定を出して囲い込もうとする傾向があります。このような状況下で、新卒採用にダイレクトリーディングを取り入れることのメリット・デメリットについてまとめてみました。


従来の採用手法と、ダイレクトリクルーティングの違い

■従来の採用手法
・仲介者(求人広告や人材紹介事業者)を介して求職者(学生)と接触し面接設定を行う。
・求人広告や人材紹介を介することで、求職者(学生)は一定の「意向上げ」がされた状態になる

■ダイレクトリクルーティング
・仲介者(求人広告や人材紹介事業者)を介さず、求職者(学生)と直接やりとりをする
・そもそも「自社のことを知らない」または「自社に全く興味がない」学生に対してアプローチをするケースが出てくる


ダイレクトリクルーティングのメリット

・自社で能動的に採用活動を行っていくことで、採用に関する独自のノウハウが蓄積される
・SNSやダイレクトリクルーティングサービス内で公開されている学生のプロフィールを見て、選別することができる(無駄な人からの応募と対応工数を削減できる)
・今まで自社に応募してきていない潜在層の掘り起こしが可能
・企業が求める人物像を理解している採用担当者や経営者自らが、スカウトを打つためミスマッチが防ぎやすい。ミスマッチを防ぐことは内定辞退や早期退職を防ぐことにもつながる
・SNSやダイレクトリクルーティングサービスを上手く使い分ければ、媒体掲載費や人材紹介決定費用などのコストを削減できる可能性がある


ダイレクトリクルーティングのデメリット

・優秀な学生は人気・競争率が高いため必ずしも採用がスムーズにはできない
・求人広告や人材紹介などの業者にアウトソースせず、自社で完結しないといけないため労力がかかる
・自社に興味がない学生を狙う際は、いわゆる「意向上げ」のフェーズから対応が必要、よって採用が長期化する可能性がある
・有能な学生は、同業他社からの引き合いも多く競争率が高くなる

新たな採用手法を採り入れる際には、上記メリット・デメリットと自社社内体制について協議した上で、慎重に進めることが大切です。
そもそも採用目標人数が多い場合は、その工数から、ダイレクトリクルーティングを取り入れることは不向きと言えるでしょう。

ダイレクトリクルーティング

新たな採用手法を取り入れる際に注意したいこと

ここまで、ダイレクトリクルーティングについて紹介してきましたが、別の採用手法についても1つ触れたいと思います。

リクルーター制度について


新卒採用のリクルーター制度とは、若手社員を中心に母校へ出向き、研究室やゼミ、サークル等を介して後輩学生に接触する手法です。

〇メリット
・同じ大学出身の先輩としての親近感を利用しながら、就職活動全般の相談に乗ることで後輩学生の入社意向を醸成することができる
・『就活のための説明会』という名目で、学生とリクルーターを早期接触させ事前選考を進めることができる

〇デメリット
・『就活のための説明会』の実施、学生との相談会が、土曜日や平日夜などの業務時間外にかかってしまうケースがある

このリクルーター制度のように、企業の採用担当者以外の社員も一丸となって、優秀な新卒学生を採用しようとする動きは多く見受けられます。しかし、新たな問題となっているのは、採用担当者の業務過多・求められるスキルが変化していることです。

新たな課題:採用担当者への業務しわ寄せ


今回取り上げた、ダイレクトリクルーティングやリクルーター制度のような「攻め」スタイルの採用手法が企業側に広まっていくことは、下記業務が付随して発生するということを理解しておくと良いでしょう。

・ランチや飲み会など、業務時間外で行う学生との接触
・SNSを利用して個々の学生へ接触を図る細かな業務
・スカウト利用する人材データベースで、自社にあった学生を探す業務
・有効なスカウトメールを作成する業務
・業務時間外での面接対応・遠方の学生に直接会いに行く出張面接

どれも採用担当者に求められるスキルが高く、業務時間外での作業も多くなる傾向にあります。所属企業によっては採用担当者の業務内容は新卒採用だけではないため、企業人事のあり方についても社内で検討する必要があるでしょう。


まとめ

時代の変化とともに、新卒採用の様子もすっかり様変わりしました。従来は、決められた時期に就活情報サイトが解禁となり、エントリーに来た学生を一斉にふるいにかけて選んでいくことが採用担当者の役目でしたが、昨今ではその役割は大きく変化しています。
ダイレクトリクルーティング、SNS採用、リクルーター制度など企業が積極的に求職者に声をかけていく「攻め」スタイルの採用手法が取り入れられることで、企業人事のあり方も大きく変わってきたのではないでしょうか。
企業の採用担当者は、昨今の急激な採用市場の変化にしっかりキャッチアップすることとともに、新たな採用手法で取り入れるべきものを見極めていきましょう。その際には、社内の人事体制そのものを見直す必要があるかもしれません。