企業選びも激変⁉コロナ禍における企業研究の進め方

新型コロナウイルスの流行に翻弄された2020年。
依然としてコロナが収束する見通しは不透明であり、先行き不安や景気悪化は避けられない状況です。2020年度卒業予定となる大学生等の就職内定率も69.8%と5年ぶりに70%を下回り、リーマンショックに次ぐ下落率を見せるなど 、就職活動においても厳しい時代が訪れようとしています。

そこで今回はコロナ禍での就職活動の動向も踏まえながら、企業研究の進め方と企業選びについて解説していきます。

企業研究は何のため?

大手航空会社が2021年度入社の新卒採用を中止することが決定するなど、就活生には厳しい状況が続くコロナ禍。コロナによる景気悪化で企業の採用活動が厳しくなればなるほど、就活生にとって重要となるのが「企業研究」です。「企業研究」を攻略するために、まずは「企業研究」の目的と情報収集の方法を確認しましょう。

企業研究の目的

企業研究とは、「企業を理解するための情報収集と分析」をすることです。「企業研究」は「自己分析」と同様に就職活動を勝ち抜く上で欠かせない部分であり、企業と自分自身をマッチングさせる重要な要素の1つとなります。

一般的に企業研究は

数多く存在する企業の中から、自分の価値観に合った企業を絞り込む
企業のことを詳しく知ることで、志望動機や自己PRを具体化する
志望する業界の動向や競合他社、販売先などを知ることで働くイメージを明確化する

といった目的で行われます。やみくもに企業の情報集めをして売り上げや設立年度を暗記することではありません。 厳しい就活戦線を生き抜くには、「なぜその企業でなくてはならないのか?」という点を掘り下げ、説得力のある志望動機と自己PRを作り上げていく必要があります。

受けようとする企業の情報収集や同業他社との比較をしながら、その企業でなければならない理由を明確にするとともに、「就職活動をする上で働く企業に何を求めているのか?」、「将来その企業に入って何を実現していきたいのか?」といった問いに自ら向き合い、自分自身の働く姿に重ねていく姿勢が企業研究には大切となります。

企業情報の集め方

就職活動において企業研究が重要なことは理解しているものの、実際のところ「企業に関する情報をどうやって集めたらよいかわからない」と感じている就活生も多いのではないでしょうか。

最近ではインターネット上から多くの情報を収集できるようになりましたが、その全てが正確な情報とは限らないのが現状です。誤った情報を鵜呑みにすると正しい企業研究ができないばかりか、選考を受ける企業に対し悪い印象を与えかねないため情報ソースの取り扱いには注意が必要です。企業研究をするにあたっては、できるだけ企業の公式サイトや信頼できるリソースから情報を取得するように心がけましょう。

企業情報や業界の動向を知るのに役立つ媒体

企業の公式サイト
新聞(一般紙だけでなく業界新聞もおすすめ)
新聞社や報道局発信のニュース(ウェブ・ラジオ・テレビなど)
四季報
業界地図
IR(株主・投資家向け)情報
各就活サイトの掲載情報

上記のような媒体のほか、志望する会社に勤めている社員に直接に話を聞くといった手法もあります。企業説明会やOBOG訪問などを利用し、実際に働いている人の生の声を聞くことで、企業サイトやニュースでは見えてこなかった会社の実情などを知ることができ、より働くイメージが明確になるでしょう。

企業研究のポイント

企業研究をするには、「企業に関する情報」と「業界内の位置づけ」の2点から見ていく必要があります。

企業に関する情報を知ったうえで競合他社と比較をすると、企業独自の強みや弱み、市場の動向などを読み解くことが可能となります。そのため企業研究をする場合には、志望する「企業」のことだけでなく、必ず「業界」の動向やニュースなどをチェックして、業界全体を俯瞰して見るように心がけましょう。

企業情報

企業の特徴を知るためのポイントは、主に「企業の設立背景や理念」、「事業内容」、「制度や社風」、「採用情報」の4つです。

■企業の設立背景や理念
その企業の基本情報を知るために、企業理念や創業時期、所在地をチェックしましょう。創業時の時代背景や創設者の想い、理念に込められた意味などを読み解くことで、企業の存在意義を理解することができます。

■事業内容
企業が扱う商品やサービスといった事業内容を知り、「どんな問題を解決するためのビジネスなのか」、「お客様に提供している価値は何か」を押さえておきましょう。加えて、サービスの対象者や価格帯、企業独自の強みなどを知っておくと、業界での立ち位置を分析するのにも役立ちます。

■制度や社風
制度や社風は、企業の「働き方」とも密接に関係しています。人事教育制度や福利厚生などの従業員の働き方、研修制度、社員のスキルアップ支援など、社員の働きやすい環境がどのように整備されているか確認しましょう。特にワークライフバランスを重視する就活生にとっては注目したいポイントの1つです。

■採用情報
応募したい企業が出てきても、その年に必ず新卒採用が行われるとは限りません。また2020年度までは定期的に採用活動を行っていた企業でも、コロナ禍で2021年度以降の採用活動が見送られたり、募集人員が削減されたりするケースも見られます。 「いざ応募しようと思っていたら採用が取りやめになっていた」といったことの無いよう、採用動向は常に確認しましょう。

業界内の位置付け

企業情報を確認したら、次は「業界内の位置づけ」に着目します。業界全体のトレンドや動向を俯瞰して捉え、同業他社との違いや企業独自のビジネスモデルなどを分析することにより、その企業が持つ魅力や特徴が見えてきます。

中でも着目すべきポイントは、「業態・取引先」、「事業規模」、「資本構成」の3つです。

■業態・取引先
企業の業態は、「一般消費者を相手にする事業(BtoC)」と「企業・法人を対象にした事業(BtoB)」の2つに大別されます。業態によってビジネスの相手や営業のアプローチ方法、販促方法などに違いが出るため、志望する企業がどちらの業態なのかチェックしておきましょう。さらに企業が取り扱う商品やサービスの分野・領域、業態を同業他社と比較し、その企業ならではの強みや特徴を言語化しておくと、志望動機を書く際にも役立ちます。

■事業規模
企業の規模感を把握するためには、売上高や営業利益、従業員数などを確認しましょう。特に、景気動向と合わせて売上高の推移や営業利益を見ることは、業界のトレンドや市場シェアを読み解く上で参考になります。また前年と比較して売上高や利益率が大きく増減している年に注目すると、商品やサービスの拡大・縮小傾向なども把握できるため、企業活動の流れを掴むことができます。

■資本構成
資本構成とは、一般的に「日系企業」、「外資系企業」、「グループの系列」を指します。資本構成は、企業の人事評価制度や社風、福利厚生に大きな影響を与える場合があります。 たとえば大きなグループ企業の場合、入社式や新入社員研修をグループ一体で行うケースもあります。そのほかグループ間での出向・異動が生じる場合や、資本構成が変化して働く環境に大きな影響が出ることもあるため、企業選びの際には注意したいポイントの1つです。

企業研究を就活に生かすには

企業研究の材料が揃ったら、いよいよ実際の就職活動に落とし込んでいきます。

はじめにすべきこととして

「企業ならではの特徴や魅力、同業他社と比べたときの強み・弱みは何か?」
「業界やその企業に関する時事ネタやニュース、トレンドは何か?」
「企業が抱える課題や問題点、今後の企業活動の予想(将来性)」

など、収集した企業情報を整理していきましょう。

次に

「自分の仕事選びの軸から、その企業を志望する強い理由(=志望動機)は何か?」
「自分自身の長所や特技、資格(=自己PR)と企業の接点はどこか?」
「社風や将来のビジョンとマッチする部分は?」

といった、企業情報と自己分析の結果をマッチングしていきます。

就職活動のファーストステップは、書類選考であることがほとんど。 書類選考を突破するための資料作りには、「志望度の高さ」と「会社とのマッチング度合い」をアピールすることが必要となります。そのため、志望理由や自己PRを記入する際に、企業の社風や特徴と関連付けながら熱意や意欲を伝えることが大切です。

書類選考を突破しグループ選考や面接に進んだ際には、より具体的なエピソードを添えて企業との接点を強調することで面接官に強いインパクトを与えることができます。グループ選考や面接では、話す内容だけでなくコミュニケーション能力や問題解決能力といった力も必要となります。

事前に「志望する企業では新卒にどんな人材を求めているのか?」、「どのような能力を重視しているのか?」をリサーチし、書類だけでは伝えられなかった想いやスキルを存分に発揮できるよう準備しておきましょう。

コロナ禍で激変する企業選び

2020年のコロナ禍では企業の採用説明会や就活イベントなどが軒並み中止や延期となり、学生側にとっても企業側にとっても苦しい1年となりました。このようなことから、次年度以降も景気の落ち込みによる採用活動への影響が懸念されています。

2020年から2022年の新卒採用の傾向としては、サービス業や旅行、航空業界などが新卒採用の枠を減らす一方、製薬会社やドラッグストアなどでは新卒採用を増やすケースもあり 、コロナ禍で業績を伸ばした企業とそうでない企業で明暗が分かれる結果となっています。

学生の企業選びにおいても、採用人数が少なかったりコロナ禍で先行きが不透明な業界が敬遠されたりする一方、コロナ禍で注目された企業や採用人数の多い企業へエントリーする傾向も顕著に見られています。

さらにコロナ禍において働き方の価値観が見直されたことで、

・感染症や災害など危機に強い(影響を受けにくい)企業かどうか?
・テレワークやリモートワークが導入されているか?
・フレックスタイム制や時短出社などの制度があるか?
・副業やサイドビジネスが会社の規則で認められているか?

といった側面から会社選びをする就活生も増えています。

コロナ禍での企業選びにおける注意点

コロナの収束が不透明な中、就活生の企業選びも慎重にならざるを得ない状況が続いています。
そのためコロナ禍での企業選びは、「会社の特徴」や「仕事のやりがい」といった従来の視点だけでなく、「フレキシブルな働き方に対応できる会社か」、「危機の際に社員を守れる会社か」といった企業の決断力や実行力にも目を向けることが必要となるでしょう。

またコロナの感染状況や景気動向に応じて採用活動が急遽中止となったり、突然再開したりするケースも考えられます。いかなるケースにも柔軟に対応できるよう、企業の採用情報や業界に関するニュースを注意深くチェックしておくとともに、書類選考や面接の準備を怠らないことが大切です。

まとめ

今回の記事ではコロナ禍での就職活動の動向も踏まえながら、企業研究の進め方と企業選びの方法についてお伝えしてきました。コロナ禍での厳しい就職活動だからこそ自分に合った企業をよく見極め、入念な企業研究によるマッチング作業を行い、志望企業からの内定を引き寄せましょう!