インターンシップや就活時の面接は、限られた時間で自分の強みや魅力を面接担当者に知ってもらう貴重な機会です。相手は初対面の大人、また未来を左右する「失敗できない」プレッシャーから日頃感じたことのない緊張感に襲われ、悔いの残る面接になってしまった……。そんな残念な結果を出したくはないものですよね。 一度きりしかない各面接を、悔いなくやりきりたい。こうした希望を持つ学生向けに、2019年11月30日(土)開催の「マスコミ業界仕事サミット in 東京 #3」にて、気象予報士・キャスターの石上沙織さんによる「伝え方講座」が開講されました。
「伝え方講座」は2回開催。行楽日和の晴天に恵まれたなか、多くの学生たちが就活を成功させるために足を運びました。
講師を務める石上さんは、NHK地方局のキャスターとして働き始めたのち、2013年に気象予報士の資格を取得。現在は気象キャスターとしての仕事をメインに活動しています。
その傍ら、2017年からは「スピーチトレーナ―」としての活動も開始。会社員や経営者、医師、弁護士といった社会人から就活生まで、延べ800人に話し方・伝え方のコツを伝授するセミナーやレッスンを行ってきました。少人数で行われるレッスンのほか、企業研修の講師業にも従事。その他、Webメディアでのコラム執筆など、活動内容は多岐に渡ります。
まず学生たちに石上さんが問いかけたのは、「初対面の人に合ったときに気にするポイントはどこか」です。石上さんに当てられた学生の答えは、「相手(自分)に興味を持っているかどうか」「話し方」。その他、よくある例として「服装」「髪型」など外見面が石上さんにより紹介されました。
とある会社が行ったアンケート調査では、「話し方」がもっとも多くの人が気にするポイントだとする結果も出ています。
企業側が新卒就活生に求めることは何でしょうか。石上さんは、「フレッシュさ」だと言います。
転職の場合は即戦力足り得るスキルや経験を重視されることも増えますが、まだ社会に出ていない学生たちの強みは、「すでに社会人として何年も働いている人が持っていないフレッシュさ」。いくら優れた経歴の持ち主であっても、ぼそぼそとした話し方をしてしまっては、企業側に「一緒に働きたい」とは思ってもらいにくいものです。
石上さんがよく耳にする悩みで多いのは、「滑舌の悪さ」なのだと言います。しかし、本人の話す様子を聞いてみたところ、本当に滑舌が悪い人はごくわずかなのだとか。では、なぜ滑舌の悪さが悩みになったり、一発で聞き取ってもらいにくい状況が生まれたりするのでしょうか。
その原因は、口の開きの悪さです。日本語は口をしっかり開かない状態で話しても、何となく雰囲気で何を言わんとしているのかが伝わりやすい特徴があります。そうした特徴もあり、日本人のほとんどは口をあまり開かずに話す癖がついているのだと石上さんは指摘します。結果、口の周りの筋肉が衰え、さらに口が開かなくなる悪循環に。そのため、ハキハキ話すためには、口を大きく開く練習を重ねることがコツなのです。
ここで、ふだんの口の開き方のチェックが行われました。手鏡やスマートフォンの自撮りモードで口元をチェックしながら、「あ・い・う・え・お」と発声します。ほとんどの参加者が、大きく口の形を変えずに発声していることがわかりました。 本来、口の形は母音によって異なるべきだと石上さんは言います。そこで、実際に石上さん自身もふだんから行っている口を開くトレーニングが紹介されました。手鏡やスマートフォンの自撮りモードで口元をチェックしながら行います。
※石上さん自身も、もともと口角があまり上がっていなかったのだそう
日頃からトレーニングを継続して行い、面接前にはお手洗いなどで声を出さずに実践しておくことがおすすめ。口が自然に開くようになるほか、面接前に行うと緊張からくる筋肉のこわばりがほぐれ、石上さんの体感では「噛みづらくなる」のだと言います。 「明るくハキハキと」と聞くと、つい声量の問題だと思い大きな声を出そうと考えてしまいますが、口を大きく開けて話すだけでも、如実に違いが表れるのです。
ふたつ目のコツは「メリハリ」です。日本人は、特に棒読み状態で話してしまう人が多いのだといいます。また、ついつい早口になってしまう人も。棒読みや早口では、伝えたいことが相手に伝わりにくいものです。
棒読みを回避するためのコツは、「伝えたいキーワードを強調する」こと。そもそも、日本語は英語など他の言語に比べて抑揚がなく、棒読みになってしまいがちで、相手に訴えたいことが伝わりにくいという特徴があります。日本語は文の最初がもっとも高く、文末につれて低くなっていくのが自然な流れですが、1番伝えたいことが最後にくる場合、それでは印象に残りづらいのです。
例文:「私が学生時代にがんばってきたことは、アルバイトです」 例文:「○○大学○○学部××学科の石上沙織です」 上記の例でいうと、相手にもっとも伝えたいキーワードは、1文目が「アルバイト」、2文目は名前の「石上沙織」です。このワードをあえて高く言うことを意識するだけで、相手に伝わりやすいメリハリのある話し方になります。また、強調したい単語部分だけ、ペースを少し落とすのも有効です。 ただし、やりすぎは禁物。想いを込めすぎてすべてに抑揚をつけてしまうのも、どこが重要ポイントなのかがわからなくなってしまいます。大事なところだけ強調するのがポイントです。 また、面接時に特に多い「早口」。会場でも、早口の自覚がある学生が多く見受けられました。自身も早口だという石上さんは、「緊張すると、なおさら早くなってしまうんですよね」と言います。 早口の弊害は、何を話しているのかが相手に伝わりづらくなってしまうこと。人間は、自分が理解できないものを聞こうと思えなくなる生きものなのだそう。そのため、話の内容を理解できないスピードで話してしまうと、面接担当者は聞く気をなくしてしまうのです。また、「落ち着きのない人」だと捉えられてしまうリスクがあるのも早口のデメリットだといえます。
早口防止のコツは、「間を取りながら話す」こと。一文一文の間に一呼吸置くことを意識するだけでも、印象は大きく変わります。また、矢継ぎ早にならず、間を置いて話すことで、堂々と落ち着いた印象を与えることにも繋がるのです。 また、同じく落ち着いた印象を与えるコツには、「分儀礼」があります。分儀礼とは、言葉とお辞儀とを別々に行うこと。「よろしくお願いいたします」と告げたあとにお辞儀を行うことで、さらに落ち着きのある好印象を与えられるでしょう。
最後のコツは、「わかりやすく伝える」です。これまでのコツは話し方に関するものでしたが、こちらは話す前の準備、つまり構成を指します。どれだけひとつ目、ふたつ目のコツを身につけられていたとしても、話す内容が支離滅裂だと相手に伝えたい内容を伝えることはできません。
構成を考える際には、ビジネスでよく使われる話し方のひな型・フレームワークを活用しましょう。今回、石上さんが紹介したのは「PREP法」です。
<PREP法> P:POINT(ポイント):結論・メッセージ R:REASON(理由):結論に至った理由 E:EXAMPLE(事例):詳細、具体例 P:POINT:最初に話した結論をもう一度ダメ押し 覚えておきたいのは、「まず結論を先に述べる」こと。PREP法は、自己PRや志望動機の説明時はもちろん、質疑応答時にも活用できます。 <自己PRの例> P:私は目標のためには努力を惜しまない人間です。 R:先日、初めてフルマラソンに挑戦しました。 E:実は、マラソンは未経験でした。そのため、大会の半年前から平日は5キロ、土日は10キロを毎日走り込みました。その結果、無事に走り切ることができました。 P:このようなことから、私は目標のためには努力を惜しまない人間といえます Rで理由を、Eでは聞き手が納得する詳細を深掘りしましょう。「就活 PREP」で検索すると、他の事例も見つけられます。あらかじめ想定される質問に対し、フレームワークに沿って答えを作っておくと、当日の緊張感のなかでも整然と伝えられるでしょう。 なお、ビジネストークのフレームワークには、PREP法以外にもさまざまなものがあります。学びになるため、気になる方はぜひ調べてみましょう。