3DCGの専門メディア「CGWORLD」が開催する学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」。
国内でもハイレベルな作品が集まる、業界への登竜門です。
この連載では、2024年6月に開催した第1回より「キャラクター部門」「背景・プロップ部門」の優秀者に、ツール選びから、作品への向き合い方、ブラッシュアップ方法などアドバイスを伺います。
第5回は『At day's end』で、背景・プロップ部門で5位に輝いた小林郁哉さん(日本工学院専門学校)です!!
-----優秀賞の受賞おめでとうございます!受賞の感想を聞かせてください。
ありがとうございます! 入賞が目標だったのですが、まさか5位を頂けるとは思わなかったのでとても嬉しいです。
-----作品のコンセプトや、どんな点にこだわって制作したのか教えてください。
今回の作品では、冬の冷たい空気と日没の寂しさと落ち着くような雰囲気が上手く出るように、色味やライティングにこだわっています。自然な雪のレイアウトや質感には苦労しました。
色味で意識したのは、夕日のオレンジの反対色である雪の水色を組み合わせて、どちらの色も際立つようにしたところです。ライティングでは、自然の景色と中心にいる人物とトラクター、そして夕日に視線を誘導するために、画面の周りを少し暗めにして、眩しい夕日にスッと目がいくようにしました。
朝焼けの空は、ベースは夕日の写真を用いて作成しました。元の空の素材では、自分の欲しい色味ではなかったので、Photoshopを使って調整をして理想的な雰囲気の色味を再現しました。
----------作品制作に用いたツールについて教えてください。
基本はMayaとSubstance 3D Painter、Photoshopを使用します。自分が表現したいものに合わせてツールを選んでいます。今作は雪をたくさん作らないといけなかったので、その際にZbrushを初めて制作に取り入れました。。
Zbrushで作成した雪
トラクター:モデリングはMaya、テクスチャはSubstance Painter
「使い古されたことが分かるように錆びなど細かい汚れのディテールにこだわりました」
建物:トラクターと同様に、モデリングはMaya、テクスチャはSubstance Painter
「経年劣化などを考えて汚れが付くであろう場所に汚しすぎない程度にテクスチャを描きました」
----------作品制作にかけた時間はどれくらいですか?
3ヶ月半ほどです。
----------審査員の作品の講評結果についてどのように感じましたか?特に参考になった講評結果などあれば教えてください
どの講評も自分では気づけなかった視点ばかりで、とても参考になりました。
特に参考になったのはSAFEHOUSEの鈴木卓矢さんで、
「制作者が何を伝えたいのかが少し薄いように思います。なので想像力を刺激するような情報が足りないかなと感じました。」という講評を受けてすごく納得しました。
今回の作品では強い印象を与えることが出来ていないと、自分でも感じています。自分が表現したい内容をもっと作品に取り込み、作品を見た人の想像力を膨らませることが出来るような作品を作りたいですね。
-----作品制作について、誰かからアドバイスをうけていますか?
学校の先生や、先輩、友人などいろんな人からアドバイスを受けています。アドバイス内容はさまざまで、構図や、モデル、テクスチャ、ライティングなど作品については全ての工程でアドバイスを受けています。
入賞作品
-----普段どのように、3DCGやアートを学んでいますか?
ArtStationなどでプロの作品を見るのを習慣にしてます、一流のアーティストの作品を見るとモチベーションなどにも繋がるので。他にもPinterestなどでは構図やライティングの参考になる作品を見ています。
-----普段どのように作品制作をおこなっていますか?
専門学校に通っているので学校でも制作をしていますが、基本的には家でもずっとCGをしています。
作品のWIP、完成作品は毎回X(旧Twitter)で投稿しています。投稿した作品に反応をいただけると、次の作品を作るモチベーションにも繋がるので、作品を他者に見てもらうのはすごく大事なことだと思います。
-----実践しているスキルアップの方法や、役に立った情報について教えてください。
スキルアップかは分かりませんが、映画などを観てるときに気に入ったショットや印象的な構図、ライティングがあったらスクリーンショットで保存して、自主制作で参考にしています。
-----影響を受けた作品やリファレンスについて教えてください。
背景モデラーを志すきっかけにもなったほど大きな影響を受けたのは、SAFEHOUSEの鈴木卓矢さんの弟子である、ILMの松島友恵さんの卒業制作「ほぼ完全に空洞になった都市」とSAFEHOUSEの留目貴央さんの卒業制作「流転無窮」ですね。
初めて作品を見た時には、こんなに心が動かされた作品は無いなと思いました。今でもお二方は憧れで尊敬しています。
-----志望している業界と職種について教えてください。
映像業界で背景モデラーとして働きたいです。
-----今後の意気込みについてひとこと
モデリング、テクスチャ、など技術的な部分だけではなく、1人のアーティストとして絵作りや背景デザインが出来るようになりたいですね。誰かの心を動かせるような作品を作っていきたいです。
-----ありがとうございました!