WHO'S NEXT?の優秀者に聞く、作品のブラッシュアップのコツは? 第7回:キャラクター部門2位『山頭狼』柿原諒也さん(東京藝術大学)

WHO'S NEXT?の優秀者に聞く、作品のブラッシュアップのコツは? 第7回:キャラクター部門2位『山頭狼』柿原諒也さん(東京藝術大学)

WHO'S NEXT?キャラクター部門2位『山頭狼』柿原諒也さん(東京藝術大学)
3DCGの専門メディア「CGWORLD」が開催する学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」。
国内でもハイレベルな作品が集まる、業界への登竜門です。
この連載では、2024年6月に開催した第1回より「キャラクター部門」「背景・プロップ部門」の優秀者に、ツール選びから、作品への向き合い方、ブラッシュアップ方法などアドバイスを伺います。

第7回は 『山頭狼』で、キャラクター部門で2位に輝いた柿原諒也さん(東京藝術大学)です!!
-----優秀賞の受賞おめでとうございます!受賞の感想を聞かせてください。

ありがとうございます。前回の時よりも高い評価をいただき、とても光栄に思います。

「WHO'S NEXT?」2023年第2弾
昨年の応募作品『ガーゴイル』

宮川英久氏の「基本的には一枚絵を評価するというスタンスで作品を見ていますから、もう少しシチュエーションの演出があるとより際立って魅力的に見えます」という講評を元にブラッシュアップしたのがこちら▼

「可能な範囲で背景を追加し、質感の修正を加えました。また、ディスプレイスメントマップを使っていなかったため、そこも修正しました」

-----作品のコンセプトや、どんな点にこだわって制作したのか教えてください。

このケルベロスは、ZBrushで木彫の質感と力強い造形を意識して製作しました。迫力を伝えるため、炎や筋肉のディテールにこだわり、ダイナミズムを工夫しています。

顔の構造考察

ケルベロスの首周りの考察

顔のアイデア出し

犬の品種による見栄えの模索

講評でも語られていた通り、質感としては荒々しい鎌倉仏師の彫刻を思わせるような造形を目指しました。中途半端にならないよう、木彫としてどう掘り進めるか。資料をよく集め、考察していく必要がありました。

制作過程ではかなり模索して、たどり着いた完成像だったので、最終的には質感や炎の流れでこだわれたかなと思っています。

最初に"ケルベロス"をテーマに掲げスタートしたのですが、犬種が定まらず、どう迫力ある印象に定めていくかで本当に迷いました。先生はもちろん、周りの知り合いの方にフィードバックをもらいながら、試作し、徐々に方向性を定めていきました。

地獄演出を試作

-----作品制作に用いたツールについて教えてください。

Maya、Substance 3D Painter、ZBrushなど、大半のCGの仕事の現場で使われるスタンダードなツールを使うように心がけていました。

-----作品制作にかけた時間はどれくらいですか?

大学の授業等も間に挟みつつ、合間合間で三ヶ月ほどです。

-----審査員の作品の講評結果についてどのように感じましたか?

提出当初、私が悩んでいた箇所を迷うことなく講評では指摘してくださっていたので、欠点も含め、真摯に受け止めることができました。

-----特に参考になった講評結果などあれば教えてください

宮川英久さんの講評がとても的確で参考になりました。ケルベロスのポーズや表情、無地の背景についてさらなる改善点を示していただき、有り難かったです。

宮川英久氏コメント

ガツンとした見ごたえのある、力強い素晴らしい作品だと思います。

木の質感も良い感じです。

少々惜しいなと感じたのがケルベロスの表情です。差別化しようとした意識はしっかりと感じられるものの左側の二つの顔の表情がどうしても似通って見えてしまっています。
想像上の生き物ですから難しい所では有りますが、もう少し首と胴体を長めにした方が生物としてのバランスは良いしポーズも付けやすかったのではないかな、と思いました。
三つの頭部が同じ方向を見つつ威嚇しているように見える一方、脚は前に歩みを進めているように見えるのも少々チグハグな印象に思えました。威嚇するならば足を止めより力強いポーズで良さそうです。
もし歩みを進める姿勢のままであれば、三つの頭部が別の方向を向いていても良いのかな?と感じます。

最後に、一枚絵としての完成度としては、真黒な背景はあまり望ましくないです。
ここまで力のある作品ですから、簡単な台座とごくシンプルな空間演出をするだけで見栄えが大きく変わると思います。


----------作品制作について、誰かからアドバイスを受けていますか?

私は現在、クリーク・アンド・リバー社が運営するクリエイティブアカデミー・ブラッシュアップクラスを受講しています。佐藤智幸先生の指導の元、制作をしています。作品のクオリティを上げるための絵作り全般について指導を頂いています。

サイドビューでレンダリング

受賞作品。最終的には正面でレンダリングしたものを応募

-----普段どのように、3DCGやアートを学んでいますか?

私は油画を大学で専攻しているため、絵画をルーツに美術書籍を幅広く読んでおります。CGはYouTubeやネット記事で学んでいます。具体的な絵作りについては、書籍からは、ボーンデジタルさんの書籍、「構図とナラティブ」が役に立ちました。

構図とナラティブ
https://www.borndigital.co.jp/book/31467/

-----普段どのように作品制作をおこなっていますか?

普段は大学の課題と並行して、アカデミーのCG課題に取り組んでいます。なるべく就活時期近くの期間は授業を空けて、毎日6時間以上は触るようにしていました。SNSでの発信はあまり積極的な方ではなかったので、今後発信していければと思っております。

-----実践しているスキルアップの方法や、役に立った情報について教えてください。

やはり一番は、クロッキー帳に思いつきでどんどん落書きすることだと思います。クロッキー帳は、基本白紙で大量に描けるため、自分の考えていたことが時系列で見返せます。
気がついたらイラスト、解剖図や骨格、ロボットまで、あらゆるものを無心で描いていました。デジタルでは得られない感覚が養えると思います。

おすすめの画材はクルトガの0.5のシャープペンシル!2Bがおすすめです。

デッサン力とアウトプットでのアイデア、両方鍛えられるので重宝してる方法です。あとはボーンデジタルさんの書籍など、絵作りや解剖学関係の書籍購入し、熟読していました。最近ですと「エレンベルガーの動物解剖学」と「構図とナラティブ」を読み勉強していました。

エレンベルガーの動物解剖学
https://wgn-obs.shop-pro.jp/?pid=150328198

-----影響を受けた作品やリファレンスについて教えてください。

Zhelong Xuさん。中国のスカルプターの方です。魅力的な陶器のような作風で知られており、アートステーションで見ることができます。線の流れがとても美しいです。

岡田恵太さん(Villard Inc.)。荒々しい塑像のような造形や繊細なディテールがとても魅力的でかっこいいです。CGworldさんの記事でも、スカルプトラウンジを書かれており、参考にしておりました。

ベス・キャベナーさん(Beth Cavener)。アメリカを拠点に活動しているアーティストさんで、アナログでの動物彫刻作品を制作している方です。とても美しい有機的な毛並みの表現が魅力です。

-----志望している業界と職種について教えてください。

ゲーム業界を志望しております。キャラクターモデラー志望です。

-----今後の意気込みについてひとこと

今後はもっと幅広く技法を学んで、総合的に活躍できるようなデザイナーになっていきたいです。SNSでも積極的に発信していければとも思っております。もっと精進していきたいです。

-----ありがとうございました!

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