3DCGの専門メディア「CGWORLD」が開催する学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」。
国内でもハイレベルな作品が集まる、業界への登竜門です。
この連載では、2024年6月に開催した第1回より「キャラクター部門」「背景・プロップ部門」の優秀者に、ツール選びから、作品への向き合い方、ブラッシュアップ方法などアドバイスを伺います。
第9回は 『ラーメン』で、背景・プロップ部門で1位に輝いた玉木匠翔さん(ECCコンピュータ専門学校)です!!
-----優秀賞の受賞おめでとうございます!受賞の感想を聞かせてください。
まさかラーメン単品で最優秀賞を取れるとは思っていませんでした。一喜一憂せず、引き続き頑張りたいと思います!
受賞作品
「作品制作では物と物の境目を意識しています。コップを置いた時にできる水滴、スープに浸りシナシナになる海苔、具材の境目で水分が盛り上がることでできるハイライト。そういった、物の境目を意識することで3D感を無くしています。」
-----作品のコンセプトや、どんな点にこだわって制作したのか教えてください。
「おいしそうに見えるか」にこだわって制作していました。このこだわりを軸に友達や先生方にアドバイスをもらっていましたが、何が美味しそうに見えるかなんてそれぞれ違うので、人によって意見が全く変わってくるんですよね。全部取り入れたらグチャグチャになりますから、自分の感性を信じて取捨選択することは心がけていました。
具材を個々にモデリングしてまとめている段階
「ラーメンのモデルが一通り完成するまでライティングや構図は考えていません」
ラーメンの汁は油とスープで二層のレイヤーに分けている
「油の分離している感じや奥行き感を出すために分けてみました」
仮のライティングと構図を設定した段階。
「ライティングは、料理を撮る時のセオリーである逆光ぎみのライティングにしています」
-----作品制作に用いたツールについて教えてください。
使い慣れているMayaやSubstance 3D Painter、Zbrushを使っています。どのツールを選んでも最終的なクオリティはそこまで変わらないと思っています。
煮卵のモデリングはZBrush。
「具材単体で見ても美味しそうかを見ています。レンダリングした時のハイライトの出力をイメージをしながら、実際よりも凹凸の激しい断面にしています」
お肉もZbrushで制作している。カラーテクスチャはZbrush上で手塗り。
(左:塗り終わった後、右:塗り始める前)
「ZbrushではUV展開したものに色を入れるのではなく、頂点に色を塗っていく頂点ペイントで色を塗っています。お肉の筋の隙間にも細かく入れを入れることができるので繊細なテクスチャ作成が可能です」
海苔にはメタルネスを入れることで光沢感をだしている。
-----作品制作にかけた時間はどれくらいですか?
正直、分かりません! 通学中とか寝る前とか、常に「どうしたらおいしそうなラーメンになるか」を考えて資料を集めたりしていたので、それらも含めたら莫大な時間を費やしていたと思います。実作業だけだと40時間程度です。
----------作品制作について、誰かからアドバイスを受けていますか?
家族や、アートとは関係のない人からアドバイスをもらうようにしていました。CG作品ではなく、新しく店で出す新作ラーメンを見せる感覚で見せていました。CGとしてのクオリティも大事にしていますが、なにより、定めたコンセプトが見る方に伝わる作品になっているかを重視しているので、様々な人に作品を見てもらいました。
「ポスター風にアレンジ!」
-----普段どのように、3DCGやアートを学んでいますか?
他の方の作品を見まくるようにしてます。アニメや映画はもちろん、SNSでは他人の作品の進捗が見れるようにカスタマイズしていました。
作品をじっくり観察していると「ここすごい好きだなぁ」とか「こういう工夫してあるんだ!」のような気づきを得られます。そうやって得た知見を自分の作品作りに活かしています。
-----普段どのように作品制作をおこなっていますか?
長時間連続で制作しないようにしています。ずっと自分の作品と向き合っていると段々何が良くて何が悪いのか分からなくなってくるんですよね。一旦、制作から離れて他のことをやっていると、ふとアイデアを思いついたり、これまで見えてなかった改善点が見えてきたりして、より作品にリアリティーを持たせることができます。
-----影響を受けた作品やリファレンスについて教えてください。
僕の友人によくラーメンを食べに行く人がいて、その人が莫大な量のラーメンとかお店の写真をわざわざ送ってきてくれました。ありがとうございます。
-----今後の意気込みについてひとこと
3DCGモデラーとしてではなく、アーティストとして、見てくださる方の視点に立ち、柔軟かつ大胆な作品作りを心がけていきたいと思います。
-----ありがとうございました!